サブスクリプション・コマースの市場規模は、世界的に拡大傾向にあります。業種に関わらず今後も市場規模の拡大が期待される中、サブスクリプション・コマースの導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
ただ、「どのように取り組んだらいいのか」「本当にうまくいくのか」といった疑問が出てくるかもしれません。
そこで本記事では、サブスクリプション・コマースについて理解を深めたい人向けに、
- サブスクリプション・コマースとは
- サブスクリプション・コマースが企業にもたらすメリット
- サブスクリプション・コマースが企業にもたらすデメリット
- サブスクリプション・コマースを成功させるコツ
の4点について、ご紹介します。
目次
サブスクリプション・コマースとは
「サブスクリプション・コマース」とは簡単にいうと、定額制サービスのことです。利用者は、毎月定額の料金を支払い、サービスを自由に利用できます。
動画配信サービスを思い浮かべると、サブスクリプション・コマースをより具体的にイメージできるでしょう。例えばNetflix(ネットフリックス)では、定額の月額料金で、全コンテンツ(映画やドラマ、アニメなど)観放題になっています。
サブスクリプション・コマースの仕組みは、定期購入のそれと似ています。両方とも、月額料金を支払い、継続的にサービスを利用するという点においては似ていますが、定期購入は「好きなものを毎月手に入れたい」ニーズを満たすのに対し、サブスクリプション・コマースは「できるだけ多くの商品をお得に利用したい」ニーズを満たすという点において異なります。
サブスクリプション・コマースは、動画や音楽配信をはじめ雑貨や食料品、車までさまざまな分野に普及しつつあります。制服を定額制で貸し出す教育機関も現れています。サブスクリプション・コマースは、業種を問わずに応用できる、今後も更に拡大するビジネスモデルと言えるでしょう。
サブスクリプション・コマースが企業にもたらすメリット
サブスクリプション・コマースは、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
主なメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 定期的な収入を確保できる
- 在庫管理がスムーズになる
- 顧客に関するデータを集めやすい
- 顧客との信頼関係を築きやすい
それぞれ詳しく見てみましょう。
定期的な収入を確保できる
サブスクリプション・コマースでは、毎月定額のサービス代金を回収する事が可能です。また会員登録制のサービスなので、会員数から先々の売上を予測する事も容易になります。
特に従来、利用者数の変動によって月ごとの売上が大きく変わるサービスでは、サブスクリプション・コマースに取り組む事で経営の安定につながるのではないでしょうか。
在庫管理がスムーズになる
定額制のサブスクリプション・コマースでは、およその販売数が把握できるため、必要以上に在庫を抱えるリスクが少なくなります。
企業にとって、保管スペースの確保や、保管による商品の劣化等、在庫の維持に関する問題は、できるだけ避けたいものです。サブスクリプション・コマースは、在庫の管理業務の負担を軽減する事もできます。
顧客に関するデータを集めやすい
サブスクリプション・コマースでは、サービスの申込にあたり、利用者は会員登録を行います。その際、利用者の誕生日や住所、趣味や興味などの情報を得る事ができます。申込後は、利用回数や選んでいるコンテンツ等、購買行動に関する情報も収集できます。
これらのデータを分析することで、ファクトに裏付けされた課題の発見とサービスの改善が可能となります。
顧客との信頼関係を築きやすい
サブスクリプション・コマースは、都度支払いの売買と比べ、企業と利用者の信頼関係を築きやすい環境である事も、メリットの一つです。
利用者とコミュニケーションを取りやすいサブスクリプション・コマースの環境では、
- アンケートの実施が容易
- アンケートの結果により、具体的なサービスの改善やサービスの開発が容易
- アンケートに拠らずとも、蓄積された購買活動の分析でも、サービスの改善や開発が可能
- アンケートの回答や購買行動の分析から、クーポンや特売情報の発出等、即応性の高い販売促進が可能
等、企業と利用者の間で、双方にメリットとなるサイクルを回す事が可能となります。
このサイクルはサービスの長期利用者を生み、企業側の安定収益基盤は更に拡大します。
サブスクリプション・コマースが企業にもたらすデメリット
サブスクリプション・コマースのデメリットとして、以下のことが挙げられます。
- 解約によるリスク
- 「黒字化」までの時間
- サービスの運営には十分な人員が必要
解約によるリスク
サブスクリプション・コマースでは多くの場合、安価な定額料金で、長期間のサービス利用を前提に、事業の黒字化を図ります。そのため利用者による早期解約は、事業継続の大きなリスクとなります。
但しその対策として、長期の最低利用期間と解約金を設ける事や定額料金を高めに設定する事は、利用者を多く集める事にとって、大きなハードルとなります。
定額料金と利用期間のバランスを計る事と、解約抑止のためにサービス改善を継続する事は、サブスクリプション・コマースで課せられる企業努力となります。
「黒字化」までの時間
多くのサブスクリプション・コマースでは、利用者にとって「定額で色々なサービスを回数に関係なく利用でき、元を取り易い」ことを「売り」にしています。
そのため、定額料金自体は安く設定されているケースが多く、売り切り型の売買に比べて、コストを回収して黒字化するまでに時間を要します。早期黒字化のために広告費をかけて短期間に利用者を集める方法もありますが、回収すべきコストに広告費が上乗せとなり、また多くの利用者に向けて、前述のとおり早期解約を抑止のためのサービス改善が必要となります。
サービスの運営には十分な人員が必要
システムの導入によって、サブスクリプション・コマースの運営を自動化することは可能です。しかしそれは「システム任せで全部自動化できる」事にはならず、システムの管理や、購買データの分析とサービスの改善等は、「人間の仕事」として残ります。
サブスクリプション・コマースを立ち上げ、運営してサービス改善を行い、継続させるためには、十分な人員が必要となります。
サブスクリプション・コマースを成功させるコツ
サブスクリプション・コマースを成功させるには、集客が重要であることはいうまでもありません。しかしそれは、サービスの運営をスムーズに行える体制が整っていることが前提になります。
多く集めた利用者の情報を管理し、サービスを運営することは、手作業だけでは限界があります。担当者の大きな負担となり、ヒューマンエラーによって利用者の信頼を損なう事もあるでしょう。
こうした事態を回避するには、サブスクリプション・コマースの運営を自動化するシステムの導入が有効です。
まずサブスクリプション・コマースの運営を作業単位に分解し(例えばECサイト、顧客情報の収集、販促情報の配信、購買行動の分析、代金決済関連業務、etc)、その上で自動化する作業を決定し、最適なシステムを導入しましょう。
また他方、サブスクリプション・コマースでは利用者向けの運営だけではなく、サービスの仕入先や業務の委託先等、取引先に向けた運営も発生します。こちらも利用者向けの運営と同様に、システムによる自動化を検討しましょう。
まとめ
サブスクリプション・コマースは、売り切り型の販売に比べ、事業が軌道に乗るまで時間を要します。
しかし一旦軌道に乗れば、利用者とのコミュニケーションにより、サービスの高品質化と安定収益基盤の拡大の好循環が発生するビジネスモデルです。
サブスクリプション・コマースで大切なのは、利用者の獲得だけではなく、継続的なサービスの改善と安定した運営で、利用者を「長期利用者」に導くことです。
この記事を参考に、ぜひサブスクリプション・コマースへの取り組みをご検討ください。