新しいサービスを始める際に、多くの企業が頭を悩ませていることが「料金の設定」です。料金は一度設定したら変更することが難しいうえ、サービスの利用者数やリピート率にも関わります。慎重に検討する必要があるでしょう。
価格の設定には、「コストプラス法」や「プライス・リーダー追随法」など、よく知られているモデルが複数ありますが、新商品やサービスに合った、新たな価格戦略の考え方も生まれています。その中の一つが、従量課金です。従量課金はさまざまなサービスと親和性が高く、導入している企業も少なくありません。
本記事では、従量課金とそれを取り入れたビジネスモデルについて、わかりやすく説明します。
目次
従量課金とは
「従量課金」とは、サービスの利用量や利用時間に応じて課金される課金方式のことです。例えば、電話の通話料のように「使った分だけお金を払うサービス」が、それに当たります。
従量課金には、以下のような種類があります。
① 使用課金 | 一般的に言われている従量課金モデル。ユーザーは、サービス利用量に応じて課金される。 |
② アクティブユーザー課金 | 「ユーザー数課金」の1つ。過去のログイン情報などからアクティブなアカウントとそうでないものを区別し、アクティブなもののみに課金される。 |
③ 超過従量課金 | 一定のサービス量に達した時点で、従量課金に切り替わる課金モデル。例えば、基本料金内で利用できるサービス量を超えた場合は、超過した量に応じて料金が発生する仕組み。 |
従量課金と定額課金との違い
定額課金とは、毎月決まった金額をユーザーに請求する課金方式のことです。定額課金の主な例として、動画や音声の配信サービスが挙げられます。定額課金は、期間を基準に料金を設定し、期間中に利用した量は料金に反映されません。この点が従量課金と異なる点です。
従量課金を取り入れたビジネスモデルについて
従量課金は幅広いビジネスモデルに取り入れられています。
ただし、従量課金は全てのサービスに向いているわけではありません。サービスの特性に応じた課金方式を設定する必要があります。
従量課金による売上は、「使用量(または使用時間、使用ユーザーなど)×使用単価」で算出されます。
従量課金は、次の特性を持つサービスに適しています。
- つい使用してしまいたくなる
- 手頃な料金で利用しやすい
- 定額料金にするとユーザーの間で不平等感が生じる
それでは、具体的にどのようなサービスに向いているのでしょうか。
ここからは、従量課金を取り入れたサービスとビジネスモデルをご紹介します。
従量課金を取り入れたビジネスモデルの種類
従量課金は、業種を問わず幅広い分野で用いられています。
主なものでは
- 運用型広告
- 通信料金
- オンラインショップの利用料
の3つが挙げられます。
運用型広告
運用型広告はインターネットで表示される広告の一つです。広告主が入札価格や表示期間を変更しながら運営する広告です。運用型広告では、表示されているだけでは広告料は発生しません。ユーザーが広告をクリックした時点で初めて広告料が発生します。
このビジネスモデルの例として、GoogleアドセンスやYouTubeの動画広告が挙げられます。
通信料金
利用した分だけ料金が発生する従量課金は、通信サービスと相性が良く、古くから電話の通話料金等に用いられてきました。
インターネットが発達した現代では通話料金以外にも、Skypeクレジットや従量制Wi-Fi(Android)のインターネットサービスで、データ量や接続時間に応じた従量課金が導入されています。
オンラインショップの利用料
オンラインショップやオークションサイトの手数料でも、従量課金が採用されています。ヤフオク!やメルカリでは、販売主が販売価格に応じた手数料を、運営者に支払う仕組みが導入されています。
従量課金ビジネスのクラウド業務管理サービス「CollaboOne」なら、複数の課金プランや複雑な料金計算にもラクラク対応できます。SaaSビジネスにも最適です。
「CollaboOne」について詳しくはこちらから
従量課金を取り入れたビジネスモデルのメリット
従量課金を取り入れたビジネスモデルの大きなメリットに、ユーザーから見てサービスの申込や継続のハードルが低い事が挙げられます。
従量課金の「利用した分だけ課金される」仕組みは、ユーザーにとって大きな安心感をもたらします。従量課金は、会員登録しているだけなら課金されない、もしくは基本料金内で自由に利用できる(超過従量課金)ため、契約も継続しやすいというメリットがあります。ある程度の利用を予め読み込んで料金設定を行う定額課金のサービスと比べて、サービス申込のハードルが低い上、長期のユーザー登録にもつながり、クロスセルの機会も拡がります。
従量課金を導入する際の注意点
従量課金のサービスは、「(申込やユーザー登録だけでなく)実際にサービスを利用してもらう」ことが、収益の前提となります。無料登録で会員を集めても、利用してもらわなければ利益にはつながりません。
従量課金を導入するにあたっては次の3点について、十分に注意を払って検討してください。
- サービスのクオリティ
- 複数の課金プラン
- 料金計算業務
サービスのクオリティ
前述のとおり、従量課金のサービスは「実際にサービスを利用してもらう」ことが、収益の前提となります。申込やユーザー登録そのものだけでは、収益を生みません。
従量課金を導入するサービスは、
- リリースの時点で、先発競合サービスと同等以上のクオリティが備わっている事
- リリース後も、業界の進化や後発の新サービスに劣後しないために、クオリティを改善する事
が重要となります。
複数の課金プラン
「利用した分だけ課金される」シンプルな従量課金のサービスは安心感がある一方、利用量が多い場合は定額性のサービスと比べて割高の料金となり、ヘビーユーザーを取り込めない事があります。
そこで従量課金と超過従量課金、また定額課金など、複数の課金プランを用意する事で、ライトユーザーとヘビーユーザーの両方を、取り込むことが可能になります。
料金計算業務
従量課金では、ユーザーごとの利用量に応じた料金計算業務が発生します。
また前項に応じて複数の課金プランを用意した場合は、同じサービスでも異なった料金計算を行います。
これらの業務は、エクセルを使って手作業で行う事も可能です。
但しその場合、計算作業の他に多重の確認作業が発生するだけでなく、ヒューマンエラーによる「誤った請求」と、それに伴いユーザーの信用を逸失するリスクを常に孕みます。
従量課金の導入にあたっては、料金計算を含んだ請求業務を自動化する仕組みを、必ず検討してください。
まとめ
従量課金は、サービスの提供者にとってもユーザーにとっても、たいへん分かり易い料金プランです。サービス申込やユーザー登録のハードルを下げるためには、最適といえるでしょう。
またシンプルな従量課金だけでなく、料金プランにバリエーションを持たせる事で、ユーザー層の幅を拡げる事も可能です。
ただし従量課金を取り入れたビジネスモデルは、「実際にサービスを利用される」事によって、初めて収益が成立します。成功するためには、料金プランだけではなく、サービスのクオリティも重要な要素となります。
この記事を参考に、自社のサービスと従量課金の適性について、ご検討ください。